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大腸がんは便秘の人に多い?colorectal-bennpi
便秘による大腸がんのリスク
以前より、「便秘は大腸がんの原因となる」のではないかと考えられてきました。便の中には有害物質や発がん物質が含まれており、便秘になることでそれらが大腸の粘膜に触れる時間が長くなるため、大腸がんになりやすくなるという考えからです。
しかし、2006年に厚生労働省研究班より報告された「便通、便の状態と大腸がん罹患との関連について」の研究結果では、排便回数が週に2~3回程度と便秘気味の人であっても、毎日排便がある人と比べて大腸がんになるリスクが高くなることはありませんでした。
つまり、便秘による大腸がんのリスクは特に認められなかったのです。
このことから、「昔から便秘気味で週2,3回しか便が出ません。」という方が、それだけで大腸がんを強く心配をする必要はありません。もちろん、腹痛や腹部膨満感、食思不振、体重減少などがある場合には医療機関を受診してください。
心配しなければいけないのは以前と比べて排便の習慣が変わってきたという方です。「以前は毎日便が出ていたのに、最近は数日に1回しか出ない。」「数日便が出ず、その後下痢になる。」などの場合には大腸がんなどの症状である可能性がありますので、医療機関を受診してください。
便秘はどのようにして起きるのか
便秘とは
そもそも便秘とはどのような状態のことでしょうか?
便秘症とは医学的には「本来体外に排出すべき糞便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。なかなかわかりにくい表現ですが、つまり何日便が出なかったら便秘、と決まっているわけではないのです。毎日排便がなくても、その1回の排便で十分な便が苦痛なく出せていれば便秘とは診断されません。逆に毎日排便があっても、硬便(カチカチに固まった便)や、コロコロ便で強くいきまなければ出なかったり、残便感があったりする場合には便秘症と診断されることになります。
便秘の原因
便秘はなぜ生じるのでしょうか?
便秘の原因は大きく分けて「器質性」と「機能性」とに分類されます。
「器質性」は腸管の形態の変化を伴うもので、「狭窄性(きょうさくせい)」と「非狭窄性(ひきょうさくせい)」にわけられます。
「狭窄性」では大腸がんや、潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症による腸管の狭窄(管の中が細く狭くなること)が便秘の原因となります。
「非狭窄性」では大腸が著明に拡張する巨大結腸症や偽性腸閉塞症、直腸の形態が変化する直腸瘤や直腸重積、巨大直腸症などが原因となります。
「機能性」の便秘は腸管に形態変化は認めませんが、排便機能に何らかの障害が起こっている状態です。症状により「排便回数減少型」と「排便困難型」に分類されます。
「排便回数減少型」では排便回数や排便量が減少し、糞便が多量に大腸に貯留するため腹部膨満感や腹痛などの症状が起こります。原因としては特発性(原因不明)の他、症候性(糖尿病やパーキンソン病などに伴うもの)、薬剤性(向精神薬、抗コリン薬など)などが挙げられます。また、食事摂取量の減少や食物繊維摂取量の不足など、適切でない食事習慣が原因となることも多いです。
「排便困難型」は直腸・肛門機能が低下したため直腸内の糞便を十分に排泄できないことによる便秘です。原因としては骨盤底筋の協調運動障害や、腹圧(排便時のいきむ力)の低下、直腸知覚の障害、直腸収縮運動が弱まったことなどが挙げられます。
ご自身がどのタイプの便秘かを理解して治療を行うことが便秘解消には有効です。また、器質性便秘はがんなどの重篤な疾患が原因となることが多いため、注意が必要です。
- 急激な排便習慣の変化
- 血便
- 急激な体重減少
- 50歳以上での発症
- 大腸疾患の既往や家族歴
便秘に加えて、上記の様な症状・リスク因子がある方は大腸内視鏡検査を行うことをお勧めします。
便秘にならないための生活習慣
便秘にならないためには、食事・運動・睡眠などの生活習慣が重要です。
適切な食事と水分の摂取
バランスのよい食事を1日3回規則正しく摂りましょう。特に朝飯には腸の動きを活性化し、排便を促す作用があります。朝食を抜いている人は、摂取している人に比べて便秘になりやすいというデータがありますので、朝食はしっかり摂るようにしましょう。
食物繊維の摂取も重要です。食物繊維には野菜や根菜類、豆類、キノコ類などに多く含まれる不溶性食物繊維と、果物や海藻、こんにゃくなどに多く含まれる水溶性食物繊維があります。不溶性食物繊維は水分を吸収して膨張し便量を増やし、便を速やかに排出する効果があります。 水溶性食物繊維は腸内の善玉菌を活性化させるエネルギー源にもなります。この2種類の食物繊維をバランスよく摂取することが大事です。
また、便秘の人は腸内の善玉菌が減少し、悪玉菌が増加するように腸内細菌叢が変化していることがあります。ビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクスの摂取が排便回数の増加に有効であると報告されています。
水分も不足すると便秘になりやすくなります。1日2L程度の水分摂取が便通改善にはよいとされています。一度に多量に摂取するのではなく、こまめに摂取するのが有効です。
適度な運動
運動不足は便秘の大きな原因の一つです。ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を毎日20~30分行うことで腸の動きが活発になり、排便が促進されます。毎日運動をするのが難しいという方はすきま時間に腹式呼吸をしたり、体幹をひねる運動をしたりするのも有効です。
良質な睡眠
睡眠中は腸を活発に動かす自律神経である副交感神経が優位に働く時間です。睡眠時間が不足すると自律神経の乱れが生じ、腸の働きも悪くなります。また、中途覚醒が多いなど睡眠の質が低い人は便秘となる確率が高いとされています。質の良い睡眠を十分確保することが大切です。そのためには、定時に就寝することや就寝前のリラクゼーション、適度な運動などが有効です。
これらの生活習慣の改善を行っても便秘が改善しない場合や、生活スタイルから改善が難しい場合などは、薬物療法を併用して便秘の改善を目指します。