肛門科proctology

肛門科について

肛門科はおしりに関する症状を中心に診療する科です。
おしりの疾患の代表といえば痔です。痔は成人の3人に1人が持っているとされる国民病です。その一方でデリケートな部位の疾患であるため、症状が現れてもつい恥ずかしさから受診をためらってしまう方も多いと思います。当院では患者さんのプライバシーを考慮し、リラックスして治療を受けていただける環境を整えています。
おしりはじぶんではなかなか見えない場所ですので、病状や治療効果がいまいちわかりにくいところでもあります。当院ではデジタル肛門鏡を用いて記録した画像を見ていただくことで、ご自身のおしりの状態や、治療による変化を実感・共有できるように心がけております。
おしりの症状は、大腸がんや直腸がんなどの重大な疾患の症状の1つとして現れることもあります。おしりに関してのお悩みがあれば、遠慮なく当院にご相談下さい。

肛門疾患の主な症状

肛門からの出血

肛門疾患では最も多く見られる症状です。排便時に真っ赤な血がポタポタ垂れる場合には、内痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)等が疑われます。便に赤黒い血液が付着する、ゼリー状の血の塊が出る等の場合には大腸からの出血である可能性が高いです。
痔核や裂肛でもこのような出血に見える場合もありますが、大腸がんや大腸ポリープ、大腸憩室出血、大腸炎などの可能性があります。大腸内視鏡検査で原因を調べることをお勧めします。

肛門の出っ張り、膨らみ

内痔核(いぼ痔)の脱肛や肛門ポリープなどが考えられます。こぶし大程に大きく脱出する場合には、高齢女性に多い直腸脱という疾患の可能性があります。また、希ではありますが、大腸ポリープが肛門から脱出して出っ張りとして感じられることもあります。肛門を診察しても出っ張りの原因が見当たらない場合には、大腸内視鏡検査をお勧めします。

肛門の痛み:排便時に鋭い痛みがあり、その後 1,2時間じんわりした痛みが続く場合裂肛(切れ痔)が疑われます。排便と関係なく肛門が痛む場合には血栓性外痔核や肛門周囲膿瘍などが考えられます。

肛門のかゆみ

肛門掻痒症、肛門周囲皮膚炎などが多いですが、白癬(水虫)やカンジダなどの真菌(カビ)感染症の場合もあります。

肛門の主な疾患

痔核(いぼ痔)

痔核は肛門周囲の静脈叢が拡張し、周囲の結合組織とともに盛り上がったものです。肛門の内側に出来る内痔核と外側に出来る外痔核とに分けられます。排便時の強いいきみ、重いものを持つこと、強い腹圧、長時間の座り作業、アルコールの多飲などが原因と考えられています。

内痔核

肛門の内側の粘膜部分に出来る痔核を内痔核といいます。肛門の粘膜には痛覚がないため、通常痛みは感じません。出血や、大きくなって脱出をするようになって初めて気づくことが多いです。大きくなるに従い、肛門から脱出し、戻りにくくなっていきます。脱出したまま戻らなくなり、血流障害を起こした状態を嵌頓痔核といいます。強い痛みを伴い、緊急で処置が必要となります。

内痔核は脱出の程度により4段階に分けられます。

内痔核はI,II度の内に生活・排便習慣の改善と軟膏などを用いた保存的治療を行えば、手術が必要となることはほとんどありません。しかし、進行してIII度以上になると、手術が必要となることがあります。早めに治療を行うことが大切です。

外痔核

肛門の外側の皮膚の部分に出来る痔核を外痔核といいます。皮膚には痛覚があるため、痛みを伴うことが多いです。重いものを持ったり、強い腹圧をかけたり(排便時のいきみ、ゴルフ等)した際に急に肛門が腫れて痛くなった場合には外痔核を疑います。治療は通常消炎鎮痛剤と軟膏を用いた保存的加療です。痛みが非常に強い場合には、局所麻酔下に痔核内の血栓(血の塊)を摘出することがあります。

裂肛(切れ痔)

肛門の出口の皮膚が切れて、出血や痛みを来す疾患です。便秘の女性に多く、硬い便を排泄したときに発生しやすいです。また、下痢が勢いよく通過するときにも発生します。治療としては排便習慣の改善と軟膏での保存的治療を行うことで大半が改善します。しかし、慢性的に症状を繰り返すと、肛門の狭窄を来す場合があります。その場合には手術が必要となります。

痔瘻(あな痔)

肛門内には小さな窪み(陰窩)があり、ひどい下痢をしたりするとその中に便が押し込まれます。通常の免疫力がある状態では便とともに流れ込んだ細菌に感染することはありませんが、免疫力が落ちているときなどに感染して膿がたまってしまうことがあります。この状態を肛門周囲膿瘍といいます。膿瘍はおしりの皮膚側に進展し、痛みや熱を伴います。膿瘍がおしりの皮膚側に穿破すると楽になりますが、膿が自然に出ない場合には、局所麻酔科に切開・排膿が必要です。
また、排膿した後に肛門内の陰窩と皮膚との間にトンネルのような道が出来てしまうことがあり、これを痔瘻といいます。痔瘻が形成されると膿瘍が繰り返し出来たり、トンネルが枝分かれして複雑化したりします。長年慢性的に炎症を繰り返すと、まれにがん化する可能性があります。痔瘻と診断された場合には、手術が必要です。