大腸がん治療についてtreatment

大腸がんの進行度 (ステージ)

大腸がんの進行度は
①深達度(がん細胞が大腸の壁のどの深さまで侵入しているか)
②リンパ節転移の有無
③遠隔転移の有無の組み合わせ
により、ステージ0~に分けられます。

①深達度[T因子という]

大腸がんは大腸の粘膜から発生し、大きくなるにつれて大腸の壁の内部に深く入り込んでいきます。がんがどこまで入り込んでいるかを表すのが深達度です。

②リンパ節転移[N因子という]

がん細胞は主にリンパの流れを介して、リンパ節に転移をします。がんのある腸管に近い順から腸管傍リンパ節、中間リンパ節、主リンパ節、遠隔リンパ節に分けられます。

③遠隔転移[M因子という]

がん細胞は血流を介したり、直接散布されたりすることで他臓器(肝臓・肺・腹膜等)に転移をします。

これらの3つの因子を総合して、進行度(ステージ)が決まります。

遠隔転移 M0 M1
リンパ節転移 N0 N1-3 Nに関係なく
深達度 Tis ステージ0
T1a・T1b ステージI ステージIII ステージIV
T2
T3 ステージII
T4a・T4b

このステージと患者様の全身状態などから、最適な治療方法を選択します。

大腸がんの治療法の種類

内視鏡治療

大腸がんに対する内視鏡治療は、ステージ0とステージIのうちがんが粘膜下層の浅い位置までにとどまるがん(T1a)に対して行われます。ただし、内視鏡観察のみで粘膜下層の浅い位置でとどまっているか、深い位置まで入り込んでいるかを厳密に診断することは困難です。
内視鏡切除後の顕微鏡検査で、がんが深い位置まで入り込んでいたり、血管やリンパ管に噛みついて(浸潤して)いたりした場合には、リンパ節転移がある可能性が10%程あるため、追加で手術治療が必要となることがあります。

内視鏡治療には以下のような種類があります。

①内視鏡的ポリープ切除 (ポリペクトミー)

主にφ1cm 程度までの隆起した病変に対して行います。内視鏡の先端からスネアと言う金属製の輪を出し、病変した部位を縛り切ります。病変が大きい場合には高周波電流で焼き切ることもあります。

②内視鏡的粘膜切除術 (EMR)

主になだらかで引っかかりがない病変に対して行います。病変の下に生理食塩水などを注入して盛り上げます。スネアを病変周囲の正常な粘膜までかけて、高周波電流を流して切除します。

③内視鏡的粘膜下層剥離術(ねんまくかそうはくりじゅつ) (ESD)

主にEMRが困難な大きな病変に対して行います。EMRと同様に病変の下に生理食塩水などを注入し、病変を浮き上がらせます。周囲を高周波ナイフで切開し、病変を徐々に剥がし取ります。

手術治療

ステージII~IIIの大腸がんに対する治療の中心は切除手術です。リンパ節転移のリスクのあるステージIや一部のステージⅣ大腸がんに対しても適応となる場合があります。
切除IV手術では病変を含む腸管と周囲のリンパ節を切除し、残った腸管をつなぎ合わせます (吻合)。
直腸がんの中で病変と肛門が非常に近い場合には、腸管とつなぎ合わせることが出来ないため、人工肛門を作る手術が必要です。

手術は腹腔内へのアプローチ方法の違いにより、以下のように分類されています。

①開腹手術

多くの方が「手術」と聞いてイメージするものだと思います。古くから行われてきた方法で、腹部を20~30cm程切開します。創(「そう」と言って、傷口が開いているタイプのキズ)が大きくなるため、術後の痛みが強かったり、癒着が起こりやすかったりするというデメリットがあります。しかし手術時間は比較的短くて済み、出血などのトラブルに対応しやすい、他臓器に噛みついた大きながんに対応しやすい等のメリットがあります。大腸がんの治療に必要な方法の一つです。

②腹腔鏡手術

腹腔内に炭酸ガスを注入して膨らませ、4~5カ所の小さな創からカメラと鉗子という細長い道具を挿入して手術を行います。小さい傷口から器具を入れて治療をしますので、開腹手術のように傷口を大きく開かなくて済みます。そのため、傷口の痛みが少ない、癒着が起こりにくい等のメリットがあり、現在最も広く行われている方法です。

③ロボット支援下手術

2018年より直腸がん、2022年より結腸がんに対してのロボット支援下手術が保険収載されました。ロボット支援下手術では術者はコンソールという3Dモニターのついた機械に向かって座り、ロボットアームについた鉗子を操作します。腹腔鏡に比べて操作のぶれがなく、鉗子の可動域も広いため、より繊細な手術が可能になると期待されています。

手術以外の治療法

化学療法

化学療法とは抗がん剤を用いてがんを治療することを言います。手術が局所的な治療であるのに対し、化学療法は全身に対する治療になります。目的によって2 種類に分類されます。1 つは切除しきることができない進行がん・再発がんに対する化学療法です。定期的に画像などで効き具合を評価し、組み合わせを変更しながら継続していきます。もう一つは術後補助化学療法と言い、手術後の再発を予防するために行う化学療法です。こちらは予め決められた期間のみ治療を行い、再発がなければ終了となります。

放射線療法

放射線療法は手術治療と同様に局所療法であり、多くは化学療法と一緒に行います。大腸がんでは直腸がんの骨盤内再発を抑えることを目的に手術前に行うことがあります。また切除不能な直腸がんや骨への転移などに対する治療や症状緩和の目的で行うこともあります。

免疫療法

免疫療法は免疫の力を利用してがんを攻撃する方法です。大腸がんでは遺伝子検査で効果が期待されることが判明した場合に、免疫チェックポイント阻害薬を使用することが出来ます。

土井クリニックが可能な治療について

当クリニックで可能な治療は内視鏡治療の中のポリペクトミーとEMRです。EMRで切除できる場合でも、病変が大きい場合には入院治療が可能な病院をご紹介致します。内視鏡治療だけでなく多くの手術・放射線・化学療法を経験してきていますので、最適な治療法になるべく早く到達できるようにお手伝いをしたいと考えています。